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ウチらしいセミナーをやっていたら歩留がすごいことになったよ、あるいはありのままを見せることの意味

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うちの会社がやっているオンライン無料セミナーの歩留まり率が異様に高いという話を聞いた。歩留というのは、「参加者数÷申込数」のこと。
これが8割近くあるらしい。この手のマーケイベントのKPIに詳しくないのだが、かなりマーケイベントに力を入れている会社でも歩留は50%程度とのこと。つまりケンブリッジのセミナーは異常に高いということだ。


僕はイベント運営というよりも、もっぱらスピーカーなので、普段こういったKPIを全く意識しないが、聞くと悪い気はしない。というか、すごく嬉しい。
もし有料イベントなら、すっぽかしはほとんどなさそうだ。お金がもったいないから。
でも無料イベントの場合、出るつもりで申し込んだものの、アレやコレやで忙しく・・ということはしょっちゅうあるだろう(僕もそのケースが多い)。人間、タダで手に入れたもの(この場合は参加権)は大事にしないものなので。

無料でも8割近くということは、
・面白いだろうから、なんとしても出よう
・今の仕事に直結しているだろうから、他の作業や会議よりも優先しよう
と思ってくれる方がほとんど、ということ。期待の高さに身が引き締まる。

スピーカーにとっては、数字以上に大事なのは参加してくれる方々が熱心なことだ。
話す側のモチベーションにとっては極めて大事。仕事だからといって、地蔵の前で熱の入った講演なんてできるわけない。

この意味でも、ウチのセミナーに参加してくれる人々は自慢できる。
まず、zoomのチャット機能で質問を投げてくれる。スピーカーである僕が唸るような本質的な質問もあれば、ちょっとしたコツを教えてあげたくなるような質問もある。
もちろん講演中になるべく拾って、回答する。他の参加者にとっても、僕らが一方的に話すのを聞くよりは理解も深まるし、聞いてて飽きないだろう。

最近は同僚と2人で話すことが多いのだが、自分の出番でないときは、ひたすら回答botのようにチャットに回答を書きまくることが多い。やっているうちに楽しくなってくる。もはや趣味の領域だ。

参加者の反応でありがたいのは、質問だけではない。
例えば「なるほど・・」「こんな経営者、羨ましい」みたいな素朴なつぶやきも多いのだが、これは(心理的に)助かる。オンラインセミナーって、話している方は結構孤独なので。「喋ったことがちゃんと届いている感」はほんと大事。
盛り上がってくると追っかけきれないくらい投げてくれるので、話していてとても楽しい。

僕は昔から人の目を見ながら話すのが苦手で、リアルセミナーのときも空中の1点を見つめながら話していた。だから反応を文字でもらえるオンラインセミナーのほうがむしろ好きだし、得意かもしれない。

そして僕らが話すテーマに沿って、
・我が社ではこういう悩みがあります
・我が社でこれをやったら、こうなってしまう・・
みたいな「自社に引き寄せた上での反応」を書いてくれる人も多い。

もちろんこれに対してもスピーカーがコメントするのだが、うちのセミナーに来る参加者がすごいのは、こういうコメントに対して他の参加者から
「ウチも同じ悩みがあったので、こう対処しています」
みたいなアドバイスが結構頻繁にあることだ。
ありがたい!僕らも勉強になる!そして多分、書いた方も頭が整理できて勉強になっている!


さて、参加者自慢はこれくらいにして、なぜ熱心な参加者がこれほど集まってくれるのか?を考えてみよう。
理由の一つは、これまで描写した「双方向な知の交流の場」を良いと思ってくれる方が多いからだろう。「熱心な参加者が多い⇒場の質が上がる⇒熱心な参加者がより集まる」という好循環だ。これが全てかもしれない。

とはいえ、これは「ニワトリとタマゴどちらが先か?」みたいな話なので、「ウチのセミナーにも熱心な参加者来ないかなー」と口を開けて待っていても、何も起こらない。もちろん僕ら主催者側(スピーカー側)だって、努力はしている。

僕らのセミナーが進化を始めたタイミングは特定できる。2011年だ。これより前は、僕らも凡庸なセミナーを開催していた(僕はその頃からスピーカーの1人だったので断罪される側だ)。
プロジェクトを一緒にやったお客様が登壇してくれる回に限って、生々しくスペシャルなセミナーを開催できていたが、それ以外の回はまあ、普通。
職業がコンサルタントなので、例えば日系のシステムインテグレーターさんの講演よりは話がうまいとは思っていたが、今から考えるとどんぐりの背比べだった。

それをはっきり変えたのは、2011年の「プロジェクトプランニング」というセミナーから。何回かタイトルを変えながら、今も定番セミナーとしてやっているし、zoom録画でもすぐに見られる(今は「業務改革の始め方」というタイトルみたいだ)。


このセミナーは内容も良かったみたいで(自分で言うけど)、これをもとに書いた本(業務改革の教科書)は今でも増版を続けるロングセラーになっている。
でも、このセミナーが画期的だったのは内容だけではない(自分で言うけど)。なんというか、ウチのセミナーの方向性がこれで定まった気がする。

このセミナーから変えたことをリストアップすると・・
1)ノウハウを惜しげもなく伝える
2)実際のプロジェクトを題材にした、生々しいコンテンツ
3)流行り廃りを追いかけない
4)クオリティに妥協しない(効率を考えない)
5)ビジュアルをしっかり作る
6)自分達のありのままを出す
こんな感じだ。


1)~4)については、セミナーに限らない「マーケティングコンテンツづくりのコツ」という文脈で以前ブログを書いた。興味ある方はそちらへ。

アジャイル的コンテンツ作成術、あるいはワインバーグの自然石構築法

マーケティングコンテンツの作り方、あるいはエバーグリーンコンテンツとは



5)のビジュアルについては、「プレゼンテーションZen」を読んだことが大きい。
これについては下記参照。2011年からの改善に手応えを感じ始めた2012年のブログだ。

クソプレゼンターからの脱出、あるいはプレゼンテーションZENのすすめ



なので今日は6)に絞って解説しよう。

6)自分達のありのままを出す
これは2)の「生々しく」に似ているのだが、「生々しい事例」と「自分たちをさらけ出す」は少し違う。
セミナーにおける「ありのまま」がどんな感じかと言うと・・

例えば口調。かしこまらない。
講演している時に僕は
「ねえ濱ちゃん、この辺、あなたが以前やっていたプロジェクトでも苦労していたんじゃない?」
とか
「チャットで質問していただいたコレ、実は僕らも悩みながらやっているんですよ・・」
みたいな口調で話している。普段プロジェクトをやっているときと全く同じ感じ。わざわざセミナー用のよそ行きの顔を作らないようにしている。

講師がこんな感じで話すことについては、好き嫌いがあるかもしれない。世の中には「講師はもっとキチッとした感じで原稿を読み上げて欲しい」という奇特な人もいるかもしれない。
でもかしこまりすぎるよりは、内容が頭に入って来やすい人が多いのではないか?という仮説のもと、意図的にやっている。これも2011年の「プロジェクトプランニング」からやり始めた。
棒読みじゃないプレゼンについては、これまた大昔にブログに書いたことがある。
これも2011年に書いたものなので、この時期、「自分たちのセミナーを世間とは全然別なものにする」は僕のかなり大きな関心事だったのだろう。

プレゼンで普通に話す、あるいは放送大学という反面教師

わかり易いこと以外にも、「より僕らのことを理解して欲しい」という狙いがある。
僕らはコンサルタントにありがちな、スーツで客先に現れ「お客様、かしこまりました」という感じで仕事をするスタイルではない。もっとカジュアルで、オープンで、トークストレートだ。
その方がともにプロジェクトをやる人々とOneTeamを作りやすいし、プロジェクトが成功し易いと思って、意図的にやっている。

だとしたら、初めて僕らを目にする場であるセミナーでも、そのトーンで皆さんに接し、最初からそういう連中だと分かってもらっていた方がいい。お客様扱いして欲しい方々の期待には応えられません、というメッセージだ。


そして「楽屋トーク」についても紹介しておこう。特別なことではなく、本編が時間通りに終わったあと、講師陣が楽屋で話すようなことを10分15分くらい、そのままzoomで流している。

・今日のお客さんは反応が多くて、話していて楽しかった!
・〇〇という質問が本質的で、唸ってしまった
・時間があればもっと〇〇について話したかった。次回は冒頭を端折って時間を作ろう
・話していて思ったのだが、最近の新規事業開発だと・・
みたいな感じの、反省会みたいなことを普通に話している。
予め決めた時間の外ではあっても、1/3から半分くらいの方が残って聞いてくれている。

これも、普段社内で飛び交っている会話の「ありのまま」を伝えることに意味があると、意図的にやっていることだ。

今でも覚えている。コロナによる在宅勤務が始まって2ヶ月後くらいに、初めてオンラインセミナーを開催したときのこと。オンラインで話す事自体は、社内のミーティングと変わりないし、意外と問題なくできると思った。
だが同時に、
「あ、これは今までやっていた対面セミナーよりも、会社の雰囲気みたいなものが伝わりにくく、不足してしまうな」
と直感的に思った。そこで、その日の最後に楽屋を公開することにしたという次第。

先日は講演を始める前(参加者がzoomに参加してから開始時刻を待っているまでの隙間時間)にも楽屋トークをしていたら、参加者がチャットで「内輪話がダダ漏れですが、大丈夫ですか?」と心配してくださった。
慌てて「ケンブリッジのセミナーってこういうノリなんですよ。お気遣いありがとう」と伝えましたが。

「楽屋トーク」が、冒頭に強調した「ケンブリッジのセミナーには必ず参加しなくちゃ!」という熱心さを生む力になっているのかは不明だ。
でも僕らスピーカーを身近に感じて「また聞いてみたい、この場に参加したい。次は自分もチャットで質問してみよう」と思ってくれる助けになっていたらいいな。

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