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過去の常識の物差しでいまの常識を評価する

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カナダの文明批評家でありメディア研究の先駆者であるマーシャル・マクルーハンは、次のように述べています。

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われわれはバックミラーを通して現在を見ており、未来に向かって後ろ向きに進んでいる。

私たち人間は、新しい事態に直面すると、最も近い過去のものごとに執着すると、彼は言っているわけです。まさにその通りで、例えば、「テレワーク」や「オンライン会議」といった表現は、その典型です。

そもそも、「ワーク」は出社が常識であり、これとは違うので「テレワーク」、「会議」は、参加者がその場に一同がリアルに会するのが常識であり、これとは違うので「オンライン会議」と呼んでいるわけです。

もはや「ワーク」も「会議」も、どこででもできる時代となり、あえて区別するまでもなく、状況に於いて使い分ければいい時代です。これは、過去のものごとを基準にいまを表現しています。このような区別を意識しなくなったとき、私たちは、真に「前に向き」になれるのでしょう。この常識を当然と受け止めて、働き方や雇用のあり方を再構築しなければ、優秀な人材を惹き付けておくことはできません。

「システム開発」についても同じ話で、旧来のITの常識の範囲での狭義の解釈に執着し、クラウド・ネイティブや生成AIを、特別なのだと意識している限り、これからの社会のニーズに応えられません。

例えば、「ウォーターフォール開発とアジャイル開発では、どちらの生産性が高いのか、どう使い分ければいいのか」や「クラウドとオンプレミスはとのように棲み分けるべきか」、「生成AIには置き換えられないプログラミングは、どういうところなのか」などは、「ウォーターフォール開発」、「オンプレミス」、「人間によるコーディング」という「最も近い過去のものごと」に執着した発想です。「アジャイル開発」、「クラウド・ネイティブ」、「生成AIによるコーディング」が当然であり、前提であるとすれば、このような疑問を持つことなどありません。

まさに、「バックミラーを通して現在を見て、未来に向かって後ろ向きに進んでいる」姿そのものです。しかし、このような状況は、プログラマー(コードを書く人)がエンジニア(ビジネスの仕組みを作る人)に転換する絶好の機会かもしれません。

プログラマーのままでは、仕事ができなくなってしまうわけですから、自分の仕事を再定義せざるを得ません。仕事と言うよりも、社会での役割と考えるということです。

では、どのように変えればいいのでしょうか。

  • ITが分かり、業務が分かり、経営が分かり、これを自分の言葉で語れる教師的エンジニア
  • IT前提のビジネス・プロセスを設計し、実践のシナリオを描くことができるデザイナー的エンジニア
  • 高度なシステム設計やプログラミング・スキルを駆使できる職人的エンジニア

いずれの道を選ぶかは人それぞれですが、いずれにしても、コンピューター・サイエンスや数学の知識を土台に、これからの常識を駆使できることが、両者に共通しています。

かつて、マーク・ローウェル・アンドリーセン(Marc Lowell Andreessen)が、次のように述べています。

全ての分野で、ソフトウエアが世界を呑み込む。
Software is eating the world, in all sectors.

これからの時代は、すべての会社がソフトウェア会社になる。
In the future, every company will become software company.

こうなるには、あらゆるビジネス・モデルやビジネス・プロセスを、デジタル前提に最適化して、作り直ささなくてはなりません。上記のようなエンジニアという人材が、これまでにも増して必要とされます。

本来の意味での「システム開発」のテーマは、尽きることはなく、ますます増えていくでしょう。まさにこの点に於いて、「IT人材不足」は、さらに深刻な事態になるでしょう。

SIビジネス、あるいは、ITビジネスのポテンシャルもここにあります。そのための人材を育てる、集めることに、注力すべきは言うまでもありません。

過去の復習ではなく、未来を予習する

これからの学びは、このような視点が、大切になります。コンピューター・サイエンスや数学は、未来を学ぶ土台です。その土台の上に、過去の常識を当てはめるのではなく、未来の常識を予習して、これからのニーズを先読みする能力を育てなくてはなりません。

昨今、リスキリングという言葉が、世間を賑わしています。リスキリングの前提は、アンラーニングです。アンラーニング(unlearning)とは、学習棄却ともよばれ、持てる知識・スキルのレパートリーのうち有効でなくなったものを捨てることです。その上で、これに変わる新しいことを「リスキリング」することです。「未来を予習する」のは、何をアンラーンすべきかを知るにも必要です。

古いやり方を捨てることができず、過去の成功体験の惰性が残ったままでは、これからの常識が、非常識に写ってしまいます。自ずと自分を正当化するようになり、新しいことへの壁を立ててしまいます。

過去の常識を盾に、いまの価値観を持つ人たちを批判し、自分の考えを押しつけてしまう人もいます。当然、新しいことを学ぶことにも消極的になります。そうならないためにも、まずは「アンラーニング」を徹底し、自分の中に凝り固まったバイアスを外さなくてはなりません。

過去の常識の物差しで、いまの常識を評価する

そのようなことにならないようにしたいものです。

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斎藤昌義 著
A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1

目次

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  • 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
  • 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
  • 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
  • 第5章 コンピューターの使い方の新しい常識となったクラウド・コンピューティング
  • 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
  • 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
  • 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
  • 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
  • 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー
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